96年 8月 14日 〜 17日  < 飯 豊 >

   長走川赤抜ゲ沢〜杉の沢下降   

古元 一弘  

◆日程   :前夜発3泊4日(車)

◆コ ース :

◆メ ンバ :古元一弘・鈴木孝司(鈴蘭山の会)・大草洋

◆地形図 : 1/2.5万図  蒜場山
. 本来は本流の長走川大滝沢に行きたかったのですが雪渓を恐れて有力な支 沢の赤抜ゲ沢に行って来ました。出合までには材木廊下がありますがここまでは 水も少なく楽しく遡行できました。 赤抜ゲは大滝沢よりは容易らしいとはいえ 、やはり飯豊は飯豊、急斜面の厳しい高巻きに肝を冷やし、連瀑帯は地図では想 像できないスケールでした。 全般に水線どうし行けるところが多く、淵や小滝も 豊富なので、スケールはやや小さいもののなかなか楽しめる沢でした。(去年の都沢に比べて何て楽なんだろう) 何よりも 本流との出合直後にあるブナ森河原は本当に美しいブナの森の中の流れで、泊ま り場に最適です。我々はここで台風をやり過ごしました。

◆8月14日 快晴
長走川林道車止9:20→10:20長走川→杉の沢出合11:20→11:50白滝沢出合12:20  →13:50材木廊下→15:10赤抜ゲ沢出合→15:25ブナ森河原
<アプローチ〜白滝沢出合まで>
. 今回はラッキーなことに林道が健在で峠を越えて長走川付近に降りた少し 先まで車で行くことが出来た。これで昨年より2時間程度は稼いだ。結果的には これがなければ完走は難しかったかもしれない。
. ここから暑い林道をひとしきり歩くと前方には烏帽子山とそれに突き上げ る雪渓が一筋見られます。やはり大滝沢は雪渓が健在のようだ。
. 川に降りると早速アブの歓迎だが昨年に比べれば可愛いものだ。今年の本 流筋は去年の半分以下の水量で、水も汚れ気味。昨年の素晴らしいエメラルド色 の流れの印象は無かった。雪渓の崩壊で汚れ、ずっと増水がなかったためだろう 。坦々と続く河原に所々ゴルジュを配した流れはいつしか次第に深くなり白滝沢 出合に着く。当初計画ではこのあたりまでだったが未だお昼なので赤抜ゲ沢出合 先を目指して前進。

<材木廊下>
. 更に前進すると最初の2段15m滝が現れる【写真左上】。ここは左の泥ルンゼから高巻く 。ブッシュ帯に入っても傾斜は強く手を離せばお陀仏状態の高巻きが続く。私は ザック(体も?)がウエイトオーバー、やっぱり飯豊の高巻きは軽量化が必須だ 。おまけにここで1lの日本酒を山の神に捧げる。ショック・・。リーダーが一 番足を引っ張って懸垂で降りる。

. この先も明るいゴルジュが続くが、まもなくお化けが出そうな暗いトンネ ル状の中の7m径の釜と3m滝が現れる。落ち口に環流する流れが全く無く、瞬間 的だが相当の泳力を要する。時間が心配なので右に逃げようかとも考えたが。ふ と落ちている細長い流木に目がいった。右壁を見ると果敢にも突っ込んでいって 八ツ目ウナギ泳法で往生している大草さん。これを流木で押す奇襲作戦が功を奏 し、後はザイルで楽チンにあがらせてもらう。
. 暗い滝の下から緑色の提灯状の防虫ネットをかぶって出てくる大草氏は、 まるで妖怪だ。知らない人が見たら腰を抜かすに違いない。
. この上が材木廊下【写真:右下】で、水量が少ないためもあって快適に越える。しばらく 行って出口のところがちょっと厳しい。材木廊下からは赤抜ゲ沢出合まではゴル ジュが続き小滝や釜、淵などを気持ちよく快適に越えていく。

<赤抜ゲ沢とブナ森>
. 赤抜ゲ沢に入ると水も温く側壁も小規模になる。小滝やナメを3つ程乗り 越えるとブナ森の河原になり、時間も丁度良い。焚き火に良い河原、平らで美し く藪も薄いブナの台地、穏やかな流れ、ビールを冷やす冷たいわき水と一夜を過 ごすのに全ての要件を満足するこの豊かな森で、我々は台風を避けることにする 。

. 焚き火をつけて石の上にくつろげばブナの梢に風がそよぐ。夕陽が斜めに 差し込み、のびのびと聳える白いブナの幹が濃淡に彩られる。瑞々しい緑も次第 にオレンジ色に染まり夕暮れの帳が降りていく。冷えたビールで乾杯した皆々は 満ち足りた思いを込めて口々にこの森への賛辞を述べる。滝もゴルジュもいらな い、ただ森の精と交歓できるこの地に来たことが、この沢旅の目的ではなかった ろうか。
. 闇の帳が周りを覆えば焚き火がありがたい。岩の上で寝ころべば遥かに高 いブナの梢が焚き火の光を僅かに映し、その黒い狭間から美しい夏の星座が姿を 見せる。風はやがてブナの樹冠を騒がし、星々は嵐の接近を告げるかのように激 しく瞬き出す。

. 最初は河原で寝ていた我々も夜半前、砂や木ぎれ、焚き火のおきまで飛ん でくる突風で目をさまし、森のなかのテントに避難する。ここは全く安全地帯、 ただ風で折れた木の枝の落下直撃だけが少々怖い。

◆8月15日 台風通過 停滞
. 夜明け前から降り始めた雨はやがて豪雨となり、激しく降り続く。台風は 飯豊と朝日の間に上陸し朝日連峰上空を横断しているようだ。八久和に行ったパ ーティを一応気にしながらも、我々は起きちゃ寝、喰っちゃ寝ののんびりとした リズムで美しい森の生活を楽しむ。

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