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<クラガリ峡突入>
. ここからゴルジュに突入するまでは次第に狭く急。強い圧迫感で奈落の底へ落 ち込んでいくような感じがする。しかし、斜面自体は新雪のウハウハ状態。最高 に気持ちよく滑る。傾斜も 30 度前後がほとんどである。私もレンゲ谷出会い直前まではふわふわバタフライ を楽しむ余裕がある【写真左】。レンゲ谷出会いの上は門のようになっていて、この下は唯 一滝があると感じさせるところだ。クレバスが隠れていると大変なのでボーゲン でおっかなびっくり進む。やや広くデブりもなかった谷も、この手前から、いよ いよ黒々とした核心部突入、幅 10 〜 20m 、所々 5m 程に迫ったところもある。傾斜自体は上部よりゆるく、次第に中緩斜面になる 。レンゲ谷は岩で構成された2〜 3m 幅の極度に狭い廊下で出会っていた。夏には本当にすごいところだろう。

. ここから大ナル谷出会いまでが正念場だ。ここでは写真も撮らず一目散に下る 。谷はほぼデブリでおおわれているが、新雪がそれを覆い隠していて概ね快適に 滑る。後から考えると本当はそんなに危険では無いのではとも思うが、滑ってい るときはそんな余裕はない。ハヤ谷は予想以上に雪崩の巣で、上部からの度重な る雪崩が本谷全体に氾濫している。ここからは予想外に幅 60m長さ 500m に広がり大雪渓状になる【前ページ巻頭の写真】ここまでゴルジュ帯突入から 30 分足らず。レンゲ谷出会いからはたった10分強で通過したと思う

<大ナル谷を登りナル谷滑降>
. 今回一番心配だったのが. 柳叉谷の脱出ポイント。大ナル谷は夏期記録では滝で 出合っている。果たして登れるかどうか。?ここが登れなければ、場合によって はザイルにバイルを結んで左岸の斜面の立木にひっかけてよじ登ろうかとまで思考 えていた。
. しかしこの出合の滝は完璧に左右からのデブリで覆われ、斜度も大したことは 無かった。ただ気持ちが悪いことに、すぐ上に今にも落ちそうな大きなブロック が引っ掛かっている。初めて「雪崩のロシアンルーレット」を実感する羽目にな る。一網打尽にされるのを避けるため、危険地帯は一人づつ通過。この待ち時間 に別名飯豊川男 ( 鈴木 ) 氏はなんと出会いの岩壁によじ登って伝説の山菜行者ニンニクを取っていたと ・・・・。流石は名前負けしない行動だ。

ナル谷乗越にたどり着いて乾杯、万歳、案外あっけなくクラガリ峡の滑降は成 功してしまった。この滑降中雪崩の音も聞こえず、雪玉さえも崩れなかった。 ( 乗越で六兵衛谷の方からわずかに雪崩の音が聞こえたようだが)気温が低けれ ば、 30 cm未満の積雪はそんなに問題にならないのかもしれない。 . ここから我々は朝日岳を正面に、快適なナル谷の斜面を飛ばす【写真右上】。対岸には柳又 中流部のパラダイス的景観が我々を待っている。柳叉谷のナル谷の出会いは1昨 年以上に埋まっていて、ブリッジが断続的に下流へとのびている。今回もこの地 点は容易にわたることができた。今年は積雪は多かったものの4月以降雨が多く 、沢は結構増水しているので、ここも結構気がかりだったのだ。ただし上之廊下 入り口のゴルジュはやっぱり口を開けていてここまで下ってくることはできない 。

Photo:朝日岳の登りから柳叉谷を振り返る↓   . 

<赤男谷出合から朝日岳>

. 後は柳叉中流部の素晴らしいパラダイス的山岳景観の中、ナル谷の朝日岳を目 指して淡々と歩く。途中水と山菜が出ているところがあり、青物と水を補給。こ こから朝日岳までの景色は本当に筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい。眼下の雪 と疎林のパラダイス的景観を前景に、清水岳が形よくアルペン的にそびえ、右に は大ナル、ナル谷大雪渓、正面は柳叉谷上流部の黒々とした裂け目、左は雪倉、 旭、向こうには毛勝三山、剣立山、後ろに残したナル谷に我々のシュプールがま ぶしい。山々は今日のは新雪に化粧されて純白に輝いている。

. ゼンマイ池付近は小さな起伏のある栂の木がまばらに生えた楽園的な地形、こ こでカモシカ氏が現れ、逃げるまいか、グーグーゲゲげー〜と話しかけてくる。鈴 木氏、薬師沢小屋でのバイトで覚えた?カモシカ語でグエ、グッゲゲゲぇ〜・・・ などとお相手をしている。

. 大仕事を一つ済まして気がゆるんだのか、素晴らしい景観に後ろ髪を引かれた のか、朝日への登りにはかなり時間がかかって、朝日岳登頂は17時近く。ここ の展望も素晴らしい。左は剣立山から白馬まで、右には夕日に日本海が輝いてい る。
 朝日池あたりを今夜の宿と下る。この最後の下りの雪がモナカ雪でめちゃめ ちゃくたびれる。小澤さんと鈴木さんは限りない転倒で、珍しく食事もとれない 程ばててしまう。大量に水を作り、味噌汁、スープコーヒーお茶で水分から補給 するとやっと体が戻ってくる。疲れたときに味噌汁は実に美味だ。


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