飯豊スキー縦走、飯豊川横断、大又沢、桑の木沢滑降(2/2)  前のページへ


◆4月29日. 飯豊川横断:快晴

. さて翌朝、昨日の疲れをとり、アイスバーンがゆるむのを待つため、出発を 8時とし、烏帽子岳コルまで斜登高、当初予定より高く上り滑降開始は9時、や や 予定より遅れる。 コルからは最初右よりの広い尾根状を滑り、雪庇の 切 れ間を狙 って烏帽子沢へと急斜面を滑降、広く超快適な好斜面が続く。
. 1200m 付近は飯 豊川流域唯一の高原状の広い緩斜面になりここで一服、スキーは実 に 早いがなか なか疲れる。ここで写真など撮って更にp1146へ目指す。このあ た りから初めて 樹林が出てくる。ここから洗濯沢へ真っ直ぐに下り、デブリを さ けつつ滑ると飯 豊川本谷は直ぐそこだ。
. この滑降コースは嫌らしいところは 皆無で、滑落、雪崩 の危険も少なくほとんど超快適なスキーが楽しめた。


( 飯豊川への滑降 (鈴木) →)

. 登り口予定の赤谷はこの直ぐ下である。このあたりの本谷は幅50mもの雪 渓 状でこの時期なら雪崩の心配も少ない。(洗濯沢出合には高差50mもはい上が っ た大雪崩の爪痕が見られるが)
. 本流の上部は超クラガリ峡状で柳叉なんか よ りず っと険悪そうでちょっと行く気にならない。(といっても柳叉も遠くから 見ると かんなものだったかな??)鈴木氏はこの場所に立つのは4回目、こん なところ に四回も来る奴はまず居ないと悦には入っている。

. さてこれから大日岳へ高差1300mの厳しい登り返しが始まる。赤谷沢出 合は5m位の広さで右側からブロックが落ちかかっていて,落ちても大事に至ら ないよう穏やかな左側を巻きながら登って最初の二 股を 左に撮ると谷は平和で 上りやすくなる。1400m地点から左のカール状の斜面にト ラバースしようと試み たが、雪庇に妨げられ、右往左往して時間がかかる 。やっ と行けてもその先に また雪庇の壁、このあたりから左にトラバースしなが ら大日 岳を目指すもくろ みが狂う。
. しかしこのあたりの斜面(地蔵カル上部) はどれも 素晴らしい斜面 で一度は滑ってみたくなる(但し下部は地獄?)広 々とした雪の 斜面は一種の 別天地で時間さえあればゆっくりしていきたいところだが・・・・

←地蔵カル源頭を登る(古元)

. 大日岳にたどり着いた頃はもう17時を回り、気が焦るばかり。本来ならこの辺でピバークしても良いのだが、明日の天気予報が良くないし、何と言っても小屋は楽だから残業してでも頑張ることにする。
. 稜線直下の急 斜面を避け実川側に回り込むがここがまたすごい強風、さらに100m程下って斜滑 降に入るが、意外なところで雪庇に阻まれまた50m下る。ブッシュの中 で ア イ ゼンに履き換え、急斜面を30m程登り返して稜線に戻るころには、もう 既 に1 番星が輝いて、私は既に体力的に踏ん張りがきかなくなってきたがち んた らなら なんとか進める。ここからは尾根ももう広くただ歩いていれば御西 の小 屋に着く ことが出来る。ヘッドランプを付け星や遠くの町の灯を見ながらとろ とろ歩く。 ようやく御西の小屋につくと僅かに2階建ての小屋の頭が雪面 から 出 ていて、縦 穴が掘ってあり、何とか潜り込む。またしても中には誰も居 な かっ た。

. 2日続いた標高差1600mの超過労働、私は全くのバテバテ。ただ鈴木氏は全 く平気(でもないだろうが)みたいでさすが若い頃鍛えた人は違うもんだ本 来 なら今日たどって来たコースを振り返り、一杯やりながら余韻に浸る所であ る が それどころではない。夕食もやっとの事で流し込む状態である。ただこの コ ース 、意外に危険性は少なく、小屋泊まりにこだわらなければ途中に泊まれ る ところ もあり良いコースだと思う。もう1時間早く出て、ルートファイン デ ィ ングが良けれ ば陽のあるうちに御西まで着くことも可能なはずだ。

◆4月30日:薄曇り

. 本来は1日この小屋で停滞して疲れをいやし、余裕があれば桧山沢滑降など 考 えていたのだが、天気予報が明日の本格的な気圧の谷通過を告げている。最 終日 に降られると辛いのでここはさっさと降りて温泉でも入ろうと言うことに なった 。昨日の疲れもあって出発はのんびりと8時過ぎ、外へ這い出ると冷蔵 庫状態 の 小屋の中よりだいぶん暖かい。ここから飯豊本山のピークを踏む。展 望はあ るが 日の光は弱く、景色もかすんでいて何となく生気のない景色だ。

. 山頂小屋の向こうでシールを外し大又沢1360m地点に向けて幅の広い尾根を滑 降する。やや右への片斜面であるが広々とした気持ちよい無木立の尾根を滑降、 最後の急斜面をクリアすると大又沢の2股だ。ここからの大又沢左股は傾斜は 弱 いのに関わらず結構大きな滝があるようだ。
. 沢が右に曲がるところで、左 の枝 沢 に入るともう種蒔山北面の楽園的地形で気持ちの良いところだ。程なく 種蒔 山に つく。ここから計画では実川側に一旦滑降して登り返そうと思っていた が 、尾根 沿いにシールで進めそうなので昨日の疲れもあり楽な方を選ぶ。

. 急斜面はやや実川側に逃げ、一度だけスキーを脱いで雪壁状の雪庇を下る羽目 になるが、予想よりかなり早く三国岳に着くことが出来た。
. 

 → 大又沢への滑降(古元)

<三国岳から地蔵岳、桑の木沢の滑降>
. 三国岳からは稜線を雪稜スタイルで下降、ここも天候が悪かったり踏跡が無 ければなかな かしんどい。雪が堅かったら先ず怖くて降りれないようなやせ尾 根だ。 
. さて最後の地蔵岳からの桑の木沢の滑降は高差1000m、最初は実に快適、斜度 も三〇度内外であっと言う間に谷底へ着く。 谷底は所々デブリで覆われている が、ほんの一部を除き避けて滑ることができる。地図上で狭くなっているところ も難なく通過、コース幅は最低10m以上ありまずまず快適。標高700を割り込 むとついに沢が出始めるので、右手の林道目指して15m程坪足で登る。ここで 最後のビールで乾杯。 後は若い杉木立の植林の中を林道を見失いように滑るが 、やはり判らなくなる 。530mで沢の左側に橋を渡ると雪は尽きかけ、スキーを 履いたり脱 いだ りややこしい。川 が左に曲がると対岸にはもう飯豊鉱泉の宿 が見える。もう飯豊鉱泉まで登るのも 面倒で手近 な開いていた民宿に声を掛け 、今日はこれまでとした。

  ・・↓桑の木沢への滑降(古元)
. 山中二泊ながら今回は純縦走行動で前二日とも標高差1600m以上の登高、最 終日は登高700に滑降標高差1800、走破距離は50kmを数え実にハードな充実 した山行になった。運動量はフルマラソン二回分ぐらいあるあだろうか。しか しやはり縦走、踏破したとの満足感がしっかりと残った疲労とともにたしかに 我々の体の中に残っていた。

. ◇越え遥か踏み来た山の証には 体の痛みや雪の記憶に

飯豊の稜線に出てから下山まで出会った人は僅か4人であった。北アルプスの 一部に比べ何とも静かな山である。

<旅の終わりに>

 宿は薪ストーブのある素朴なところで、爺さんと病気で少し不自由な婆さん がやっている。爺様は昔御西のこやの管理人をやっていたそうな、山話にも花が 咲き、山菜づくしに地元産の粉の手打ちそばと 7500円としてはお値打ち価 格 の料 理に満腹し早めに床についた。 翌朝9時でタクシーで山都へ、天気は未だ 保っているようだがまあもう良い。 山間を抜け雪解けで増水している川沿い を 下っていく。平野に近づくとオオヤマ ザクラの紫を帯びた色の濃い、あでや か だが少し憂いを帯びたような花が見ら れ るようになる。

. ◇みちのくの大山桜のむらさきの  憂いを映す年老いた里

 川入と言い、下の里と言い、年寄りばかりが多く若い者の姿が見えない。こ の先10年もたでばあの爺さんもそうは動けまい。飯豊の伝統ある登山口の川入 ももう老人と病人ばかりになってこの先どうなっていくのだろうか。 都会から の流行か里にはソメイヨシノも多い。このさわやかな桜色もあの山桜 の赤紫 を 帯びた色を思うと、何か埃っぽく感じる。

. ◇みちのくの艶やかまとう山桜 里の桜もはかなくに見え

山都まで下るともううソメイヨシノの花は散り始めている。山都駅前におりた つと花吹雪の歓迎でこの山旅もフィナーレを迎えた。


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