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 93年 3月 27日 〜 3月 28日 【北アルプス】

栂池から舟越の頭〜岳栂平〜小日向の頭

文、写真、図:古元一弘    

◆メンバー :古元・前迫・小川

◆ コース :3/27 栂の森ゲレンデ〜栂池自然園〜2301地点上〜舟越の頭〜岳栂平(泊)

      3/28 岳栂平〜北股入/長走沢出合〜小日向山〜奥の滝の沢〜松川二股

◆ 地図  :白馬岳・白馬町(1/2.5万図)

 八方尾根等からよく見える小蓮華岳右側の大斜面は周囲のアルペン的な山々のなか、例外的なやわらかな女性的なラインを持ちいかにもおいしそうなスロープに見える。この斜面を滑る事は私にとり、実にに10年以上前からの課題であった。前回の敗退から2年、再び若いメンバーの参加を得て夢の大斜面を目指した。 

<プロローグ>

 調布インターから高速の早い流れに乗り4時間弱、大糸沿線のスキー場も、車をアプローチにすれば近くなったものだ。

 今回のメンバーの前迫、小川の両氏、いずれも20代の鈴蘭2年生ぐらいの我が会の今後をになうホープである。 露天風呂(夏季のみ営業)のある八方尾根松川二股に車をデポし、予約しておいたタクシーで栂池スキー場へ向かう。登山指導センターに登山届を提出したところ今年は3月になってからの降雪が多く雪崩の危険性が高いと厳重に注意される。むこうもルート以外のアウトロー登山はお門が違うらしくあまり的確な助言とは言えなかったが、この時期といわず積雪期の沢筋は、雪が消えるまで常に雪崩の危険が存在する事は忘れてはいけない。

<栂池から夢の大斜面>

 今回は万事のんびりしていてゴンドラ山頂駅を出発したのは九時半頃、先行者のトレールを追い、森の中を真っ直ぐ栂池自然園を目指す。天候は薄日が差すもののチラチラと白いものも舞っていてはっきりしない。自然園を抜けるとトレースも無く我々岳の世界が広がる。風もなくやたらに暑い。

 標高2千米mを越えると白一色の世界が広がる。折から雲とガスが晴れ始め、真っ青なスカイラインとアルペン的山々が間近にそびえている。 たおやかな2301mの丘にザックをデポし、いよいよ夢の大斜面を登る。(12時20分)  

 雪は適度に締まっていて雪崩の危険性は少ない。 舟越の頭までの大部分はおだやかな中斜面だが、ピークが近ずくにつれ30度を超える急斜面になり、最後には40度に迫りスキー登高は限界に近ずく。結局裏技博士の古元以外はピーク直下で登高を断念した。古元以外はジルブレッタの重くて不便なビンディングを使用していたのも登れ無い原因のようだ。(階段登高をしようとすると前が上がってしまってできない) 

 最近はトラブルの恐れから金属部品で構成された頑丈そうなジルが流行のようだが、この欠点に加え重い、ハードな滑降のとき横ズレを生じる、フロントピースに解放機構がないなど、欠点も多く、好みの問題もあるが、余りお勧め出来るものではない。

<舟越の頭〜岳栂平>

 14時30分、滑降に移る。最初は急斜面でびびるが次第に快適な斜面になる。特に中半から下は杓子、白馬鑓以下後立山の高峰を真正面に滑る類のないスロープで、正に夢の大斜面である。デポ地点から下もほとんど無木立の連続した中斜面が続き快適無尽のスキーが楽しい。コースは急斜面、中斜面とお好み次第だが今回は西栂ツアーコースがある尾根(仮称:西栂尾根)から雁股池の隣の平地(仮称:岳栂平)へ滑り込む。

 

 雪は次第に腐ってきて滑りにくくはなるがこの位で負けてはいけない。岳栂平に直滑降で滑り込むとまさにここは仮称のとうり雪原のむこう栂の森、その上に白馬三山が大きくそびえる景勝抜群の地である。15時40分到着。テントを張って、大雪渓へと沈む夕日の中でビールで乾杯、全く無風、快晴、雪からの照り返しで外にいても暑いぐらいだ。正に最高の1日であった。

<岳栂平〜北股入〜小日向山>

 翌日、外へ出ると改めてすばらしい景色を楽しむ。朝日を浴びる山々が美しい。7時20分出発、黒木の森を抜け、金山沢の東側の少し急なブナ林の尾根もなかなか快適で右手の山々がさらに高く聳えてくる。下のほうになると少し木が混んでくるがうるさい程でもない

 まだ沢も埋まっているようなので予定より下流の長走沢出合で北股入を渡る。8時。雪は冷え込みで固く締まっていてまず雪崩の心配も無いだろう。猿倉台地から小日向のコルまでの登りは苦しかったがコルに立てばまたまた大展望に恵まれる。ただしここの展望は夢の大斜面からの大パノラマと比較するとやや見劣りする。このころからはっきりしなかった天候は明かな悪化の兆しを示し、小日向山あたりから完全に曇となる。

<小日向山〜奥の滝の沢〜二股>

 12時10分滑降開始。小日向山からは東に延びる尾根から奥の滝の沢へ滑り込む。沢へ入ると次第に木立が細かくなり滑り辛くので北側の尾根に出る。

 1200メートル付近で伐採地に出て再び沢に戻るがこれが失敗。ヤブが濃く、沢も出てスキーを外したりいやはや大変、おまけに雨まで降り出してきた。1時間程度はロスしたろうか。よほどの豪雪の年以外は早めに林道に出た方が正解だろう。

 二股に14時30分に戻り、八方尾根温泉で汗を流して帰京した。 今回のコースは標高差2400米を滑りほとんどが快適、しかも時間的にものんびりしていて無理がなく1泊2日の山岳スキーコースとして最高にたのしいものであった。


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