▲ Junction Peak      


    94年3 月19日〜 21日 【東 北 】

白 神 岳    

 文: 慶野 実      

◆日程 :前夜発2泊3日(車)

◆コース:陸奥黒崎=林道〜蟶山直下(泊)c1〜白神小屋(泊) 〜白神岳〜蟶山〜陸奥黒崎=不老不死温泉

◆メンバー:武藤、慶野、坂詰                 

 行けると思っていなかった白神岳に、やっと行ける。40路を過ぎてこれほど待ちこがれた山行もない。同時に日本海の夕日を見ながらの露天風呂、不老不死温泉と磯の味も楽しみだ。

◆3月18日(土)晴ときどき曇

<陸奥黒崎から蟶山へ>  東京を夜出て、やっと翌朝9時頃には陸奥黒崎駅に到着。駅前の白神荘で遅い朝食を食べる。入山祝いをかねて、食前酒で前祝い。何かにつけて「ブ、シュワー」は恒例になってしまった。帰り際、食堂のおばさんに、「今日はお彼岸だから」と大福餅と林檎をもらった。 道路を少し戻り、雪が現れた林道を行けるところまで入って駐車。ここからシール登高になる。すぐ駐車場になり、これより登山道にはいる。323mを越えたコルより蟶山までの顕著な尾根に取り付く。トレースもあり樹林もそんなに濃くはない。 この尾根は上がるに従い薮が濃くなって道としては全く不適。薮に閉口して退散し、気を取り直してコルまで戻り、夏道沿いに進む。左手斜面に良い登り口はないかと小沢を2〜3本過ぎる。沢沿いの道は入山禁止の看板でストップし、蟶山までトラバース気味に登る。 やがて夏道は積雪のため不明となる。急登の尾根にトレールがあり、スキーを外し壺足で登り息を切らす。蟶山直下50m西側の鞍部で幕営になる。西に日本海の夕日を見ながらの酒宴となる。

◆3月20日(日) 曇ときどき雪

<蟶山から白神小屋まで>  出発しようとしたら、地元の5〜6人のパーティが壷足で登ってきた。あまりの速さに驚く。蟶山で方向を確認し、シールのまま滑降となる。この辺から山毛欅林の霧氷が美しい。時々、日本海が顔をのぞかせる。海を見ながらのシール登高も気分がよい。明瞭な尾根を快適に登ると森林限界となる。様相は一変して吹雪となり、尾根はアイスバーンとなる。スキーアイゼンを付けるが、それでも登りづらい。顔面に風が当たりとても春山とは言えない。さすが白神岳は簡単に登らせてくれない。 主稜線に着いてもガスは濃く、山頂の方位を確認して磁石のみで進む。ホワイトアウトの状態で気分は良くない。距離から考えて20分で小屋を発見。入り口の雪をかき分けてドアを開け、小屋の人となる。 12時近い。テルモスで暖かいコーヒーを飲み昼食とする。山頂を下って山毛欅林に幕営するか、小屋泊りにするか迷ったが、小屋泊りとする。さあ、決まったからには「プッ、シュワー」で乾杯。これがたまらん。小屋内にテントを設営し、明るいうちから焼き肉パーティとなる。明るいうちから飲んでいたので、夕方にはシュラフに潜り込む。

◆3月21日 ガスときどき曇、吹雪

<白神岳登頂、下山>  小屋から山頂は目前。一瞬のガスの切れ間を利用し、登頂となる。視界不良だが時々パーッとガスが切れる。北、東側は白また白の白神の山々。1200m級とは思えない大きな山並だ。 小屋に戻ってスキー滑降となるが、昨日降った雪でラッセルが大変だ。尾根の西側沿いが風が強くて雪がしまっているので、そちらを選ぶ。心配していた蟶山の分岐も、登頂時に赤布をつけていたのですぐ発見し、寒風の中を滑る。急峻な西側の谷に落ちないように、安全第一にゆっくり滑る。樹林帯に入ると、今回唯一の新雪滑降で信じられないくらい軽い雪だ。胸がときめくときだ。5年ぶりぐらいの気分の良い新雪滑降となる。坂詰・武藤氏も満面の笑みだ。 下りきって緩い登りにかかり、蟶山まではシールを付ける。トレースが少し残っているが、磁石で方向を確認しながら進む。蟶山までは地図を見ながら進めば迷うことはない。蟶山から650m位の高度から南に降りると、良い斜面の小沢に降りられると地元の人に聞いた。 その小沢の降り口には黄色いビニールテープが樹林に2本巻かれていると聞いたが、確認。なるほどと言えるような上がり易い斜面と樹林だ。最初からこの冬道を知っていれば入山に苦労をしなかった。滑りにくい夏道を戻ると、車は30cmの新雪をかぶっていた。 無事下山できたことを感謝し、3人で握手。車中に、唯一、下山祝用に残して置いたビールで「ブッ、シュワー」「うまいんだなーこれが」「うん」

<磯ラーメンと不老不死温泉>  リーダーの発案で陸奥黒崎駅前の「白神荘」の叔母ちゃんに下山報告を兼ねての昼食兼下山祝いとなる。 駅に到着したらこっちのもの、ビールを思いっきりのんだ。ここの叔母ちゃんの推薦「磯ラーメン」の旨かったこと。950円の中身は、ドンブリの中にホタテ貝、タラバガニの足、タコ、取れたての海草が(とろけそうな海草で香り抜群、東京では味わえない)なんとも豪快。そして魚と海草が混じりあった薄い塩味が「何ちゅうか、冷やし中華?」の美味。隣の武藤さん、東京で同じラーメンを食べたら3000円以上するだろうと言い出す。胃袋が満足したのでお礼を言うと「今日はこれを持っていきな」と、オヤキを3個くれた。田舎の人はなんとも優しい。海辺沿いの国道は一路北へ走り、有終の美の温泉へ。 念願の不老不死温泉の露天風呂と、日本海の夕日を見ながらの磯三味は2度とは味わえないかも知れないぜいたくな山行だった。時折、こんな山行は生きる楽しみを与えてくれる。

   


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