▲ Junction Peak 


  94年 9月23日〜 25日 <南アルプス北部> 

尾白川・黄蓮谷右俣

      文:村松 啓次郎         

◆日程 :前夜発2泊3日(車)

◆コース:尾白川林道終点〜尾白川本流〜千丈ノ滝上(泊)〜奥千丈ノ滝〜甲斐駒〜黒戸尾根5合目〜千丈ノ岩小屋〜(泊)〜尾白川本流〜尾白川林道

◆メンバー:村松、吉田、武富、村木

◆地図(1/2.5万図): 長坂上条、甲斐駒ヶ岳

                  

 沢登りを始めて確か2年目位に、吉田さんに黄蓮谷に誘われた。私が山登りに興味を持ったのは、高校の時。兄と一緒に行った夜叉神峠からの白峰三山に感動してからだったし、大学ワンゲルの時も南ア北部を縦走した。そんなせいか南アは好きな所だったが、当時の未熟な私では(今でも成長は遅々として進まないが)あの甲斐駒のピークにつき上げる急な沢、とてもとてもと思いながらも行くことになった。

 しかし、林道は落石で車が途中までしか行けず、面倒だと早めに沢に降りたのが失敗で、尾白川に手こずり、軽い気持ちで泳いでみたら溺れかかるわ、鞍掛沢の出会いからの巻き道を間違えるわで、えらく手間取り、坊主ノ滝までで退却。今年の夏は、尾白川本流を目指したが、悪天のため、千丈ノ岩小屋付近で1泊して、またも退却。本流域3度目の正直だとのことで、リーダー以外メンバー厳選、日程も余裕もたっぷり、無理しないのコンセプト(?)で、10数年ぶりの白いピークを目指すことになった

◆9月23日 晴  相変わらずの荒れた林道を終点まで車を進め(普通の乗用車ではかなり厳しい)、8時43分に出発。急な下り100 m程で尾白川に出る。今日は千丈ノ滝付近までなので、楽勝である。尾白川と鞍掛沢の二俣は、ワイヤーが渡してあり、右岸から左岸に移ると立派な巻道(渓谷道)があるので、そちらを行くのが速い。右岸も行けるが苦労する。(実は過去2回は右岸を行って大変だった。私のレベルでは「楽しめる」レベルを超えていた。) 10時35分、黄連谷の出会い着。尾白川を目指す大宮パーティーに伝言を残す。彼らは駒ヶ岳神社から来るはずであるが、へたに沢づたいに行くと苦労すると思っていたが、案ずるよりも生むが易し、ならず、案じたらその通りとなったことは2日後わかったのであった。 黄蓮谷出会いは、すぐ右手からの巻きとなるが、一歩がいやらしくザイルを出す。帰路にわかったが、右手すぐに残置シュリンゲがあり、そこが正しいルートの入口であった。 12時10分に千丈ノ滝を越してすぐの巻き道の上でテントを張る。こんなに早く到着するとは思ってもいなかったので、少々拍子抜けの気分。まあ、本日は沢登りというよりは、登山道を歩くのに近いものではあった。

◆9月24日 曇り、霧  はっきりとしない曇り空の中、もってちょうだいと祈りながら6時5分に出発。テント他は置いていくので荷も軽い。坊主ノ滝を右手から巻くが、巻き過ぎて二俣まで行ってしまう(6時30分)。テン場あり。7時30分にトヨ状滝で1本。事前に思っていた登攀的要素はあまりなく、私でも充分トップでスイスイと行ける。これは結構「快」であります。 8時30分頃、丁度ナメ滝。このあたりにもテン場あり。曇り、ガスの中の登り、秋で水量があまりないせいかも知れないが、さしたる悪場もなく、ルート・ファインディングに迷う所もなく、スケールの大きさを感じつつピークを目指す。人気があるルートらしく、いやらしそうな所には残置ハーケンが多くある。今回はほとんど使わずに済んだ。 ガスの中、11時50分に甲斐駒ピーク着。久しぶりのビアンコ・ピーク。結構、風もあり寒く感じるが、私は(きっと皆も)満足。お盆休みでは3年越しの飯豊川、今回も3度目の尾白川−黄蓮谷。甲斐駒の沢をやっと登ることが出来た。天気は、あまり良いとはいえなかったが、秋の気配を充分に感じ、今度は、きっと夏に、スコーンと抜けた空、青空の中を気持ち良く登りたい、そんな気にさせる沢であった。 12時35分にピーク発。黒戸尾根を下るうちに雨となる。クリサ場等が多くあり、さすが三大急登と言われることはある。武富さんは尾白川の下山で、夜中にこの道を降りたとのこと。彼はインテリだが、やっぱり本当はカモシカの血が流れているのである。 14時20分、五合目小屋着。小屋の人に道を確認し、千丈ノ岩小屋経由、テン場を目指す。五丈ノ沢を常に左手に意識しながら行けばOKである。15時35分、岩小屋。天井は低いが快適そう。小雨、ガスで少々迷うが、テン場へ向かう。15時50分、テン場着。フライシートで小屋掛けし、なんとか焚火をおこし、後はめいめい好きな酒を飲んで楽しい宴会のうちに眠りに就いた。

◆9月25日 時雨〜晴  朝は小雨だったが、9時の出発の頃には晴れてくる。9時40分、黄蓮谷出会、大宮パーティーの伝言あり。本流でかなり苦労した様子。12時5分、林道の車止めに戻って The End。車の Window にも伝言が! 大宮組は本流を巻いて、林道まで上がったのでした。 何はともあれ、念願の沢の1つの黄蓮谷。また来たい。是非夏に。南アルプスの天然水少女はいなくても、白いピークが待ってるよ。お粗末様でした。


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