▲ Junction Peak 


  94年 8月12日〜21日  【  飯  豊 】

玉川・大又沢 御秘所沢遡行

      文、写真、図:木下 久義     

◆日程 :前夜発3泊4日(車)

◆コース:

飯豊山荘〜落合〜アシナ沢出合の先C1〜千本峰沢出合〜出トミズキ沢出合〜入リミズキ沢出合〜大岩沢C2〜本社ノ沢出合〜御沢出合の先C3〜飯豊本山〜ダイクラ尾根〜落合〜飯豊山荘

◆メンバー:木下、太田、行方

◆地図(1/2.5万図):長者原、飯豊山          

 昨年、悪天とメンバーの不調により敗退した大又沢、やはり今年の夏は「大又沢へ!」今年の夏は猛暑、渇水と大きな沢にとっては好条件だったせいもあり、思っていたよりとてもスムーズに遡行できた。しかし2年越しのルート、長い沢を遡れた喜びはやはり格別なものであった。

◆8/12(快晴)

<飯豊山荘からアシナ沢出合先>

 飯豊山荘のPに車をデポして出発。45分程で大又沢と桧山沢の二俣、落合に着く。水量は想像していたよりもずい分少なく感じられる。大又沢に入り、いくつかの渕を泳いだり、へつったりしながら進むが、暑いので水の中がとても気持ち良い。人返しの渕は右岸沿いに泳ぎ、残置を使ってへつる。

 アシナ沢を過ぎて右岸に良いB.P。時間はまだ早いが夜行疲れもあるので、ここでC1とする。場所を決めてから、太田氏と上流を偵察。すぐに大渕となり泳いで通過すると右岸より枝沢が入り、大岩の滝となる。これを簡単に越すと、例の「人面の岩塔」が現れる。岩塔の下は逆くの字状の渕となっているが、流れは穏やかで、泳いで奥に進むと2m程のハング状の滝が落ちており、左岸上部にシュリンゲが垂れていた。偵察はここまで。 帰りの泳ぎは気持ち良かった。焚木を集め、フライを張り昼寝。虫もほとんど出ず、のんびりと午後を過ごす。

◆8/13(快晴)

<魚止めから第2ゴルジュ>

 今日も天気は上々。さっそく初めの渕を泳ぐ。魚止のゴルジュは時間をかければ突破できそうだが、先も長いので昨日見ておいたとうり、右岸の枝沢より高巻く。30m程上がりブナ林の段丘をトラバースする。途中、マタギのナタ目などを見、40分程で魚止の滝の上部へ下降できた。千本峰沢が入るとすぐにゴルジュとなり、泳ぎながらへつり通過する。

 しばらくでφ20mの大釜をもつ2条10m滝が現れる。直登はかなり困難と思われ、少し戻って右岸ルンゼから巻く。30m程上がってトラバースするがケモノ道に助けられ、途中の2本のルンゼも傾斜がゆるくなった所を通過でき、30分程で沢床に立てた。

 続いて花崗岩の美しい大釜が現れる。木下トップでザイルを引くが中々水中より岩の上に立てず、少々水を飲まされる。次に太田氏がトライ。やはり一歩が出ずリタイヤ。ホープ行方君が上手くスタンスを見つけてクリアー。後続を引き上げる。続く渕を小さく巻いて降りると巨岩が作る小滝と渕が行く手を塞ぐ。荷上げや、白い瀑水を浴びてのショルダーなどで通過すると出トミズキ沢の出合である。

<小屋の沢出合まで>

 しばらく沢は穏やかだが、少々暗い釜をもった3m滝が現れ、直登不可。右岸より高巻きに入ると、ゴルジュの上がテラスになっていて巾2〜3m長さ30m程の直線ゴルジュ(小次郎渕)が覗き込める。ゴルジュ出口付近より沢は右折していくので、出口へ10mのケンスイで降りる。

 ゴーロをしばらく行くと入リミズキ沢出合。あたりは明るく開け、ブロックが残っており、太陽に映し出された水の色が何とも美しい。ここの渕は容易に通過できた。少々暗い2条5m滝は大岩のトンネルくぐりをし右岸より越すと昨年下降してきた小屋ノ沢の出合であった。

<再びゴルジュ帯へ>

 中流部のゴルジュに入る。初めの斜7m滝は波立つ釜をへつりながら泳いで取付くと容易に登れ、続く3m滝は左岸のピクナルの右手を荷上げして登る。大岩の作る渕は昨年同様水流から上がるポイントが見い出せず右手より小さく巻いた。すぐに2条15m滝(地図上の滝記号)が現れるが、左岸の岩へショルダーで取り付くと後はテラス状を回り込めるので容易に滝上に立てた。

 大岩のゴーロを1つ1つ登って高度を上げると、右岸に岩峰が見え、しばらくで大岩沢が流入してくる。さらに傾斜のあるゴーロを登っていくと巾広の5m滝となり快適に登る。そろそろ疲れの出てくる頃、明るいゴーロに小さな河原がありフライシートを張ってC2とする。

◆8/14(晴れときどき曇)

 明け方3時頃目を覚ましてフライから顔を出すと10分位でいくつもの大きな流れ星を見ることができた。ペルセウス流星群だ。満天の星が美しい。

 本社ノ沢までは1か所残置を使ってへつる他は平凡である。御秘所沢に入って初めの2条4m滝を越し、しばらくで昨年エスケープした枝沢に出合う。昨年はドシャ降りの雨だったっけ……。両岸が少し立ってくると雪渓の存在を知らせるガスが流れてくる。散在するブロックを越していくと、左岸がハングした7m滝。左壁を快調に登ると滝上は連瀑になっていて、適当なところでトラバースし沢床へ戻る。

 この後いくつかの滝、釜を楽しく通過すると、沢が直角に左折するところに2段8m滝が懸かる。右壁のバンドから上に出るところがやっかいで、ハーケンを打って太田氏がリードする。

 ここを過ぎると沢は平凡になるが、又濃密なガスがあたりを覆いはじめた。現れた雪渓はしっかりしており、「これは楽勝」と思ったが100m先ぐらいで切れている。側壁のトラバースもむずかしそうなので少し戻って草付きをかん木帯まで登り、高巻くことにする。

 高巻きのトラバース中、先程の雪渓が切れていた部分がズズーンと大音響とともに崩壊し、しばらくでその上部の雪渓もズズーン、バチャーンと泥しぶきを上げて崩れ落ち、肝を冷やす。草付きのトラバースに時間がかかるので、先程崩壊した雪渓の先に下降し、雪渓の状況を窺うが又しても分断されている。側壁を降り、くぐれないことはないが、先ほどのこともあるので近付く気にもなれず、再びルンゼ状より高巻く。

 雪渓の終わった沢はゴルジュとなっており、深い渕の7m滝と右折して12m滝を懸けている。7m滝の上部をザイルトラバースして沢に戻る。12m滝は右側より木下リードでヤブリッジに登り、ブッシュに入って10mのケンスイで滝頭に降りた。続いて釜をもつ2m滝は太田氏リードで泳いで取り付く。

 しばらくで御沢出合。開けていてB.V適地である。ブロックが散在するゴーロを登り高度を上げていくと右岸に顕著な枝沢が2本入り、2段5m滝となる。上段をショルダーで行方君が上り、後続を引き上げる。今日中に稜線に出ることも出来そうだが、水もあり、焚火もできる沢にもう1泊することにする。上部の雪渓の冷気で少々寒いので今日はツェルトを張る。今日も又焚火を囲んでの楽しい夕餉だ。

◆8/15(快晴)

 すがすがしい朝である。すぐに現れるスノーブリッジは10mぐらいをくぐり抜け、崩れたブロックを使ってブリッジ上に登る。正面には長大な雪渓が現れ、それを眺めていると後方でズーンと先程くぐったブリッジが崩れ「ギョッ」とする。

 真青な空と緑色の草付、白い雪渓のコントラストが美しく思わず笑がこぼれる。雪渓が終わるといよいよ源流だ。両岸開けた草付きの中ゴーロを詰め、少々急な草付を登りきる続きと飯豊神社のすぐ下、水場の標識の所であった。昨年からの宿題、長い沢を登った満足感と終わってしまった空虚な気持ち……。メンバーと固い握手を交す。飯豊山々頂で広く伸びやかな稜線を眺めながら1時間ほどのんびりと過ごす。

 しかし本日の核心部は下山にあったのだった。あまりの晴天、ガンガン照りつける太陽と暑さ、そしてダイクラ尾根のアップダウンに3人とも軽い熱射病の症状となり、下山しての「温泉、ビール!」がしだいに遠くなっていく様に一歩一歩ダイクラ尾根を堪能したのでした。   


●鈴蘭山の会ホームページ  ◆鈴蘭16号の目次